9月15日
  パパの晴れ姿
 

   台風も来てるし、出勤したくなかったが、今日はとてもいいブツがお腹から
出てくる感触があったので行くことにした。
 午前中に、スカトロマニアのM男に電話する。
「いい黄金が出そうなんだけど、どう? 来る? あいにく天気わるいけど」
「はい! 行きます!」
 とうことで決定(笑)。

 いい黄金といっても、「いい」の基準は人それぞれだ。M男によって好みが
違う。バナナのような一本グソが好みのM男もいれば、便秘で何日もたまって
いたのが好きというM男もいる。
 今日のM男はちと変わっていて、下痢気味の黄金を愛しているのだそうだ。

 起きたときに、あ、なんか腹やべえ……と思った。
 しかし、猛烈な下痢の予感ではない(だったら征露丸飲んでおとなしく家に
いる)。ゆるーり、そろそろした、ちょっと余裕のある下痢っぽかった。

 スカトロのオプションは高い。
 だから、ワシ的にはおいしい仕事だと思っている。
 けど、すべての女王様がスカトロOKということはなく、やはり、できない
ものはできない、というS女だっている。
 この「できない仕事」を、ウチの店では「NG」と呼んでいる。
 NGにもいろいろある。
 たとえば、あんまりにも個人的な狭い趣味に走りすぎてると思えるプレイを
希望するM男。
「えと、女王様と一緒にトランプをしたいんです。それで僕がズルして勝とう
として、そのズルを女王様に見つけられてお仕置きされたいんです」
 というかんじ(実際ワシは相手しましたよ)。
 誇り高い名門SMクラブ、正当SMクラブだと、「うちはそういうのはちょ
っと……」と断られる可能性もあると思う。
 でも、うちの店はそういうの一切、お咎め、いやおかまいなしだ。

 店長の方針は「誇りよりゼニでっせ」なんである(笑)。
 SMクラブ的に、これって珍しいよなあ。
 SMクラブなんか開いちゃう人って、こだわりの人、違いのわかる人、SM
論語らせたら一晩じゃ足りない人とか多そうだもんな。
 イメクラかよ、うちは! と突っ込みたくなることが、うちでは多々ある。
 何でも受けてしまう八百万SMクラブなのだ。

 で、うちみたいな「八百万SMクラブ」の中でも、スカトロはダメな女王様
とか、生理プレイはダメな女王様とかいるわけだ。
「ダメなものを無理してやらせてもプレイが寒くなるだけだからな。いやそれ
以前に、やっぱ、できねえものはできねえよな」
 店長は言う。
「おまえみたいに、NG無しでやるってのは珍しいよなあ。なんで? 生理プ
レイとかヤじゃない? もしかして何かの苦行か(笑)?」
 以前、店長が笑ったことがある。

 苦行、ねえ。
 そんなつもりはないけど、なんなんだろう。金、かな(笑)。だって人がい
やがるプレイは金がいいっすもん。
 それと、SMクラブで働くって決めたとき、どこまでできるか確かめてみた
いっていうのがあったかな。怖いもの見たさってやつか? うん、それに近い
かもしれん。ぜんぶのプレイを受けきってみたいっていう、そんなチャレンジ
ャーに似た気持ちはあった気がする。なんのため? なんでワシはそんな意味
不明なチャレンジ(笑)をしようというのか。んー、わからねえっす。


 私は、M男の顔に股がってウンコした。
 M男は口を開け、私の下痢便を飲み、食べた。
 単なるウンコが「黄金」に化ける。ワシにとっては、文字通り黄金、マネー
の元なのだと思うと、おかしくって仕方がない。アッハッハだ。M男に気づか
れないように、くすっと笑う。
 M男は身体中に、黄金をなする。なすりつける。ウンチまみれになる。
 まるで、子どもが泥遊びをしているように、一心不乱に楽しそうに、茶色い
半固形を塗りまくる。けっこうすさまじい光景だ。

 M男はウンコにまみれた体を両腕で抱くようにして、
「女王様の黄金が僕の服なんです。正装なんです!」
 誇らしげに、恥ずかしそうに言った。
 化粧水をつけるように、うれしそうに頬にパタパタしたりもしてもいる(ウ
ンコローションだー)。
正装かい、ウンコが! そういう人もいるんだなあ。世の中って、わけわか
んないなあ。奥さんや娘さんが、このパパの晴れ姿(笑)見たらショック死す
るんじゃないかなあ。

 聞いてみると、小さいときに、近所のおねえさんが草むらで野グソしていた
のを目撃してまったことが、スカトロの道に入る原因、原点となったようだ。
 おねえさんも罪作りな野グソしたもんだなー(笑)。

 プレイが終わって、
「こんな変態になっちゃって……。僕、なんていうか、もう戻れないところに
来てしまったんですよね」
 M男がふと自嘲の笑みを見せた。
 それを言うなら私もだ。同じだよ。私だって、戻れないところに来てしまっ
たさ。人に股がってウンコしてんだぜ? 尋常じゃねえよ。エグイよ。


 出勤するとき、台風の影響で、空はピンクと紫のまだらになっていた。きれ
いだった。
 奈々ちゃんは、天候がわるいと気分がいいらしい。
「天気がわるいとさ、みんな出かけないし、家でおとなしくしてるだろうし、
なんか、世間の人が楽しいことしてないんだ今だけは! って思うと落ちつく
んだ。だから台風好き。天気がわるいほど好き。性格わるいっぽい?」
 まったく勝手で、ヤなかんじっぽいことを言う。
「うん。とってもヤなかんじ」
 私は笑った。







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