９月３日
	本日発売
	目立つ（笑）。とにかく目立っとるな、ワシの本。 　宇多田ヒカルの黄色いautomatic イスを思わせる蛍光イエローなカバーが、 新刊台の上でデカい顔をしていた。 　このあたりで一番大きな書店にまず出向いた。 　はたして本当に自分の本が置いてあるのか？　自分の目で確かめるまでは信 用できたもんではない。 　いやー、あるじゃねえか。五冊も置いてくださってるじゃねえか。よし。明 日また来てチェックせねばな。何冊売れたか見届けねばな。 　しかし、店の開店時間にやって来てしまうなんて、ワシも恥ずかしいー。 　けど、なんていうか本当に目立ちすぎ（笑）。すっげー目立ってやんの。 　爽快なほどあざとい販売戦略で、わかりやすくて気持ちいいな。あざといの 大好きさ。あざとくていいじゃん。あざといの万歳！　 　気になるのは、はたしてどんだけ本を読んだ人からメールが来るかだ。 　anetとかの無料アドではなく、ニフティの私のメールアドレスを載せてみた のだ。この会議室のことも載せている。 　本の私は、キャバクラ嬢綾ちゃんで、初々しくて、文体もかわいくて、現在 の"fuckin' blue film"なワシの片鱗はまったく窺えない（あとがきがかろう じてNAOっぽいだけ）。 　ちょっとかわいい感じで書いてるのさー（笑）。だから、本のイメージでこ の会議室に来たら、読者はびっくり仰天だな。ヒヒヒ。それが楽しみー。 　本の内容的には、私と店の店長を中心に書いている。 　最初は「店長物語」と副題が付いていたほど（結局その副題は無しになった が）、彼は本のなかで重要なポジションで登場している。 　キャバクラを辞めてから、彼とは連絡を取っていない。 　今日、店長のケータイに電話してみた。 「本、出したんだ」 　そう言ったら、彼はなんて言うだろうか。 「マジーッ？　何それ？　何々？　どういうこと？　印税入った？　奢れ！」 　って言うかな。 「何だよ、おめー、本なんか出してんじゃねーよ」 　と笑いつつ、十冊買ってくれる気もする。 　店長のケータイは繋がらなかった。 　勤めていた店に、綾とは告げずに電話をかけてみた。 「○○さんはもう辞めてしまってるんですが」 　新人であろう聞き覚えのない男性従業員の声が答えた。 　私は妙に納得した。ああ辞めてたんだ、そうすんなり思った。 　十年後も同じ店で働いてるような気もする人だし、ふらふらとどこか放浪の 旅に出てるような気もする人だし、何かヤバい商売に首を突っ込んでるような 気もする人だし、自殺してても不思議でない気もする人だし、要するに何をし てても違和感の無い人なのだ。 　たぶん彼と二度と連絡を取ることはできない気がする。無理して探すつもり も全然ない。向こうも私に連絡を取ってくることはないだろう。 でも、それでいい気がする。
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