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	１０月１３日
	心をぶつということ

	ようやく出勤した（笑）。　やっぱり間をあけると、感覚を取り戻すのに時間がかかるな。調子が出てきたのは三人目くらいからだ。　最近、「びんたプレイ」と名付ければいいのか、思い切りびんたしてください！　って客が多いな。どこかで流行ってんのか、びんたプレイ？　　ＳＭシーン（って、そんなのあればの話だけど）に疎いもんで、流行とか全然わからん。　今日も、びんた希望のＭ男が来た。　パシーン。パシーン。　いやー、人をぶつのって疲れるなあ。手がいってえよ。　このＭ男は、本人は無意識なんだろうけど、妙に芝居がかってるところが随所にある。ズレてるというかなんというか（笑）、常連のＭ男なのだけど、私はいつもおかしくてたまらない。　だって、今日だって、ぶたれながら、「僕の心をぶってくださいーっ！」って叫ぶんだぜ（笑）。　　こ、心ですかーっ？　それ、どうやって、ぶてばいいんだよ。「心をぶて？　フフフ。生意気言うじゃないの」　吹き出しそうなのをこらえて、なんとか女王様モードを保持しようと必死にワシは言う。「おまえの心って何よ。ん？　××会社のエリートサラリーマンのおまえの気取った心のことかしら？　みんなの前ではええかっこしいだけど、本当は変態なことばっかり考えてるしょーもない心のことかしら？」　こいつとは信頼関係ができているので、言葉責めも安心してできる。　Ｍ男が言ってほしい言葉が、泉のように湧いてくる。「おまえは、みんなから気取ってるって思われるんだよねえ？　昔からそうなんだよね？　うん、見るからに気取ってるもんね。ＳＭクラブに来てもさ、僕はＭ男ですって言ったってさ、気取ってんのが抜けないのよ、おまえは」　怠けた体に気合を入れるために履いたピンヒールで、横になったＭ男のチンコを私は踏みつける。もうチンコはパンパンだ。「僕は気取り人間ですって言ってみな」「僕は……」「ほら、言ってみな。僕はプライドが高い気取り人間ですって」「僕は……」「言えないの？　本当に気取ってるねえ、おまえは。チンコこんなにみっともなくふくらませてるのに、まだ何かおまえは気取ってんの？　バカみたい」　見下したように、私は笑う。　私はプレイ中、決して声高に怒鳴らない女王様。　言葉責めは、優雅に静かに意地悪く。それが私のモットーだ。　Ｍ男の乳首を思い切りぎゅーっと、乳首が取れそうなほどめいいっぱいひねりつぶしてみる。　Ｍ男は、「あうーっ」と声をあげた。　そして、「ぼ、ぼ、僕は気取り人間なんですぅぅぅ」とようやく言った。「なんだ、言えるじゃない。認めればいいのよ最初からねえ。フフフ。ご褒美に、おまえのほっぺたぶってあげるわよ」　私はヒクソンのようにＭ男に馬乗りになって、パッシパシ往復びんたをかました。手がじんじんするほどぶちまくる。Ｍ男は、何発ものびんたを浴びながら、恍惚の表情を見せていた。「僕の心をぶってくださいーっ」　何度もそう言った。　人をぶつと、当たり前だけど、自分の手も痛いよな。　プレイ後の私は、しばらく水で手を冷やしたのだった。　心をぶつって、考えてみればすごい言葉だ。Ｍ男がぶってほしかったものに少しでも近いものを私はぶってやれただろうか。　昨日の日記を読んだ村松さんが「NAOちゃんが、女の皮をかぶったオヤジだという感じはずっとしてました」　と言っていた。　やっぱりバレてる（笑）？　山田さんの家で、真っ赤なハイビスカスが咲いている。　ハイビスカスって、こんな時期にも咲くのか。　キンモクセイの匂いはすごい。花ってこんなに匂うものなんだなあ。　山田さんの家が、匂いに包まれているみたいだ。　出勤前、キンモクセイの香りに立ち止まっていると、山田さんちのおばあちゃんに話しかけられた。「花が好きなのねえ」　私は頷いた。「ご家族に花の好きな方がいるんでしょう。花が好きな人は、家族に花好きの人がいるのよね」　そういえば、私の父親は花が好きだった。　久しぶりに本日のあんぽんたんメール。　今まで、あんぽんたんメールには一度も返信したことはないのだが、今日はヒマつぶしにちょいと相手してみた。「おめでとうございます。あなたは百万人の中から僕の友達？　に選ばれました。僕は都内に住む21歳の歯学部生です。もし当選したなら何処に住んでいて何歳かを添えてメール下さいよろしくね。神悟でした」　に対して、ワシはちょっくらジャブをかます。「ふざけんなボケ」　歯学部学生、神悟、ここでいきなりキレて、「ぼけにぼけなんていわれたくない！だまれブス、ブス、ぶす」　ワシは、再びジャブを繰り出す。「てめえ、勝手に人にメール送ってくんじゃねえよ。メーワク考えろ」　すると、神悟、速攻でメールを返してくる。「うるせーよ死ねよ、シネ」　アッハッハ。弱っちいなあ、神悟（笑）。　ワシは説教をかます。「メーワクメールを勝手に送りつけるなって言ってんだよ。こういうのがどれだけメーワクなことか考えてみなよ少しは」　神悟、見事な速攻メール。「うるさい。そんなにメール送られるのがメイワクならアドレスかえれば」　ワシはさらに説教。「あのな、あんたみたいなメーワクメールがｉモードで多いから、ドコモが対策考え中なの、あんた知ってんの？あんたみたいな人にたくさんの人が迷惑してんだよ」　神悟のメール、ここで途切れる（笑）。　ま、こんなもんだろね、ひよわ君のひよわな自我は。
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