１０月７日
	私が守る
	熱は七度五分くらい。 　ボーッとした頭で、ぱらぱらと「僕たちのＳＭ読本」を読む。 　ある緊縛師の 「もし相手が僕のミスで死んだなら、僕も死ななければならない」 　という言葉が印象に残る。 　私にも覚悟というほど大げさではないけれど、そんなようなものはある。 　たとえば野外露出プレイ中にもしも運悪く警官と遭遇してしまったら（いや そんなヤバイ場所ではやらんけどね。万一のことっすよ）。 　体に縄を巻いたみじめな恰好のＭ男、女装しているＭ男は、私が守るしかな い。慌てておどおどして、「こ、こ、こんな人、知り合いじゃありません！」 なんて（笑）口走ったりは決してしない。 　私だけなら逃げられるぜ……と卑怯な逃亡をしたりはしない。 　私の上着をＭ男に着せ、おまわりさんに、堂々と、”事情を説明”する。 　それくらいのささやかな覚悟は持っている。 　Ｍ男は、最終的には私が守るべき存在だ。これは、別に特殊な状況を想定し なくても、ふだんのプレイ中でも同じこと。 　私が守る、と、今、簡単に言ったけど、でも、それは本当はどういうことな のだろうか。 　稚拙なＳをしてＭにケガをさせない、なんてことは当たり前。たぶん、こう もっと精神的なことなんだよな。 「本当におまえは変態よねえ。おまえの汚いアナル、こーんなにがばがばに開 いちゃってるよ。わあ、恥ずかししい」 　なんてことを言いつつ、おまえの変態は私がぜんぶ見てあげるよ、ぜんぶ受 けとめてあげるから、という心構えはちゃんとある。ということだろうか。 　時々、ハードな浣腸、ハードな鞭、ハードなプレイをやっていて泣きだすＭ 男っているのだ（いや、超ソフトなプレイでもいるんだけど（笑））。 「すいません。なんで泣いてるんだろ。なんだかうれしくて。ごめんなさい」 　とＭ男は言う。 　セックス中に感極まって泣いてしまう女性は珍しくないが、似たようなもの かもしれない。 　ＳＭで何かが解放される瞬間。Ｍ男が何かから解放される瞬間。を、私は何 度か見ている。目の当たりにしている。 　ウンコをぶりぶり大量にひりながら、縄で縛られながら、肌にミミズ腫れを つくりながら、アナルをペニスバンドで犯されながら、Ｍ男は何かから解き放 たれる。ぽろぽろ涙をこぼす人もいる。 　そういうとき、私は何も言葉をかけてあげることはできないけれど、おまえ は私が守るよ、そんな気持ちになるのだ。 　縛られて解放されるのだから、ＳＭっておもしろい。 　Ｍ男を解放しながら、たぶん私も解放されているような気がする。お互い、 何から解放されたいのだろう。どっちもどっちだね、Ｍ男も私も（笑）。 　だから日記なんか書いてないで寝ろってワシは。 　明日は仕事行けるかなあ。 　本を読んだ感想メール。 　はじめまして。 　突然メール差し上げます。 　無礼がありましたら、笑ってお許しください。 　先日、書店でたまたま一冊の本を手に取りまして、パラパラと眺めたら、面 白そうだったので、「職場のキャバクラ好きのNにでも教えてやるか。」とい った軽い気持ちで買って帰ったのですが、大変おもしろく読め、そして感動し ました。（などと書くと、綾さんに笑われそうですね。。。） 　ぜひ、店長にお会いしたいです。 　脚色してませんか？（笑） 　本のままの人物だったら、なんか、すばらしくお知り合いになりたい！ 　のですが。。。紹介してくれませんか？（笑） 　最後に、一言言わせてもらえば 　あの本を読んだからといって、キャバクラでモテるようになるわけねぇじゃ ん！　出版社は、相変わらずいいかげんな帯タイ（帯タイトル）つけやがる！ 　でも、だまされた読者はいっぱいいるんだろうな（笑） 　体力的にもキツい商売をされていると思うのですが、 　健康に気をつけて、これからもよい仕事をしてください。 　（次の著作に期待しています。） 　たいへん正しい読み方をしていますね。 　そうなんです！　あの本を読んでもキャバクラでモテるようにはならねえん ですよ！　かえってキャバクラに行きたくなくなるんですよ（笑）。 　あなたのような読み方をしてくださる人、私は大好きです。
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