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	１１月１６日（火）
	今まで生きてて今日が一番笑った日

	くすぐりプレイって、幸せなプレイだなあと思う。　あっひゃっひゃっひゃっひゃっー。Ｍ男はずーっと笑っている。実に呑気で平和なプレイだ。私もとーってもラクチン。　通販でよく売ってるさわさわした羽ダスターで、たっぷりとくすぐり苛めてやる。これ、リストラだなんだで疲れてるオジサンたちにはもってこいのプレイなんじゃないかなあ（ＳＭクラブ来る金ないなら、私生活でぜひ試してみてほしい）。最近、俺、笑ってないな……、という人には、絶対オススメのプレイだ。なんせ強制的に笑わせてもらえるんだから（笑）。　動けないようにＭ男の両手両足は固定してしまう。　ダスターの羽をＭ男の脇の下に持っていこうとする動きを私がするだけで、Ｍ男は「やめて～んっ！」とでも言いたげな表情を見せる。その顔のおもろ可愛いことったらねえな。ぷっ。　小学校のときに、ふざけて誰かをくすぐりたおした経験って、みんな、あると思う。みんなで一人を押さえつけて、そいつを笑い殺しの刑にする楽しい遊び。あれと同じだな、くすぐりプレイって。　ワシは何度もフェイントして、Ｍ男の「やめて～んっ！」の表情を楽しむ。　フェンイトだったんだ、と思ってＭ男がほっと息をついた瞬間を狙いすましてこちょこちょやるのがサイコーにおもしろい。　一瞬、Ｍ男は息ができなくなるみたい。笑うより先に「げほっ」なんて咽がつまったりして、見ててまったくアッハッハッハーだ。　どうしよ、呼吸不全で死んじゃったら（笑）。「お許しくださーい。あんっ。あっあっ、おやめになって、あんっ、くださーいっ！　ひゃっひゃっひゃっ。もう、ダ、ダメです～っ。お許しくださーい」　全身真っ裸で、笑い泣きするマヌケなＭ男を見てると、なんつーか、こんなのどかなＳＭも時にはありかなぁと思う小春日和のうららかな午後であった。「もしかしたら、今まで生きてて今日が一番笑った日かもしれません。笑い死ぬかと思いました。でも、僕、今、なんかすごく幸せな気分です」　プレイが終わると、Ｍ男は言った。　ふと私は思った。　人体のくすぐったいツボって、どんな精神状態のときにでも反応するものなんだろうか。たとえば、自殺直前の人間の脇の下をくすぐっでも、やっぱり笑っちゃうのかな？　もうすーっごい鬱で鬱でしょうがないときとか、何も楽しいことなくてじめじめ落ち込んでるときとかでも、人間はくすぐられたら笑うんだろうか。「ねえ、変なこと言うようだけど、もし大竹さんが自殺することがあったら、決行するまえにさ、私に電話して教えてくれない？　そういう精神状態のときでも、くすぐられたら人は笑うのか実験してみたい。そんときはタダでプレイしてあげるから」　私は言った。「アハハ。おもしろいこと考えますねえ」　大竹さんは笑った。「けど、僕は自殺はしないなあ。そういうタイプじゃないです。でも、そうですね、もしも万一、そんなことになったら、そのときは直さんのことを思い出すようにします。実験体になりますよ」　こんどは大竹さんが訊いてきた。「仮定の話として、僕をくすぐって実験したあと、直さんは僕の自殺を止めますか？」　私は、速攻で答えた。「止めない（笑）」「そんな気がする（笑）。しかも、じゃーねー、バイバーイとかあっさり言われちゃう気がする」　大竹さんは苦笑いした。　だって、大竹さんの自殺を止める理由が私にはないもんなあ。　でも、死のうとしてるときに、腋の下をこちょこちょされて、思わず笑ってしまったら、それ、めちゃめちゃカッコわるい気がする（笑）。「綾。ホステス、22歳。」を読んで感想メールをくれたマスミちゃんとメール交換をしている。　最初、彼女のメールアドレスを見たとき、ウソ！　とワシはぶったまげてしまった。Ｐメール？　つうことはチャッチャッチャッと指で打ってんのか？　この長文のメールを？　たしかＰメールは千字くらいは送受信できるはず、だけど。キーボードを使わないで、こんな長いメールを書くには一時間近くかかるんではなかろうか。私もｉモード使うからわかるけど、かなり面倒くさい作業なんだよ、あの指チャッチャッチャッは。　それを考えると、なんかこうグッとくるね。　今日もマスミちゃんからメールがきた。「藤森さん、ショックです！　たったいま、書きおわったメールが消えてしまいました！　あー、もう、せっかく頑張っていっぱい書いたのに！　今日はもうダメです、寝ます。ではまた！」　どうやら、力作の千字メールが送信する前に消えてしまったようだ（笑）。　マスミちゃんは、今一番かわいい私の読者だ。　風俗嬢志望者のための「フロムＡ」、その筋ではあまりにも有名な風俗求人情報誌、あの天下の「てぃんくる」編集部から仕事依頼メール。　いまさらながら、私って本当に風俗嬢になったんだなぁ、としみじみ実感。　ちょっと酸っぱい気分になる。ならないけど。どっちなんだよ（笑）。　かなりいい話をいただいたのだが、でも、今回はいろいろ考えてパスさせてもらった。
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