１１月１７日（水）
	センチメンタルバス
	夜になる一歩手前、夕方の一番最後ごろに走ってるバスは、どこか寂しげに 見えるのはなぜなんだろう。昼のバスって、今にもバスが歌いだしそうなくら い楽しげに見えるのになあ。 　夕方、バスの赤い尾灯がゆらゆらしながら遠くになっていくのを見るのは、 なんだかとてもいい感じ。胸が少しきゅっとする。 　ワシはバスが好きだ。 　二人掛けの隣の席でうとうと寝てるのかと思っていた奈々ちゃんが話しかけ てきた。 「あたしさ、直ちゃんと千佳ちゃんがあんなことになっちゃったこと、心のど っかで喜んでるんだ。もしかして、あたし、出ていかなくていいことになるか もしれないって。何年かして千佳ちゃんが戻ってきたら、やっぱり出ていかな くちゃならないじゃん？　だからさ……。ごめんな。なんか、やな感じ？」 　こっちを向かずに、窓の外を見ながら奈々ちゃんは話す。 「うん、すっごくやな感じだね」 　私はくすっと笑ってしまった。 　奈々ちゃんのことがかわいくて抱きしめたい気分だった。 　なんにもしゃべんないで、このまま、このバスにずっと乗ってたいなあ。 　そんな気がした。けど、やっぱり次の停留所で降りた。 　そんなねえ、センチメンタルなことすんのは恥ずかしいしー。ワシらの家、 通過しちゃうのもバカだしー（笑）。
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