１１月１４日（日）
	憂鬱なうどん
	主婦ってなんなんだろう。 　土曜日に、とあるオフ会に純ちゃんは顔を出した。 　終電を見送ったくらい楽しかったようだ。午前０時ちょっとまえ、ダンナさ んからケータイに電話が入った。 「主婦がそんなことしていいと思ってんのか！」 　ダンナさんは激怒したらしい。 　ほえー？　な、な、何それー？ 　今時そんな言い方する男の人っているのかと、ある意味、新鮮な驚きはあっ たが。それにしても、その言い方はないでしょー、と思う。 　女房が外の風に触れて、いっぱい人と会って楽しい思いをするのっていいこ とじゃあないのか？　主婦というけど、純ちゃんはダンナさんと同じく会社員 でもある。週五日ちゃんと働いて、家事だってしっかりやっている。 　私はほとんど毎夜、純ちゃんと電話している。 「今日は夕飯なんだった？」 　私が食べるわけではないのに（笑）、それを訊くのがなぜか好きで、いつも 訊いちゃうのだ。 「今日はね、小松菜のおひたしと、さといものあまから煮と、豚の生姜焼きと あと……」 　純ちゃんはいつも、さらさらっと答える。 「わっ、もうもう主婦しちゃってもう！」 「へへー。ちゃんと主婦してるよ」 　そんなバカバカしいやり取りが好きだ。 　ダンナさんは純ちゃんと私の深夜の電話も快く思ってないらしい。 「いいかげんにしろ！」 　と、さっき電話の途中で怒られたみたいだ。 　ダンナさんは驚異的に早寝の人で、たいがい十一時には床に入ってしまう。 　トイレに起きたときなどに話し声は聞こえるわけだから、今日こそは言って やる！　と思ったのだろう。 　くー、自分が寝てる時間に女房が何してようといいじゃんかよー。何が悪い んだよー。純ちゃんが早く寝たってセックス三昧決め込むわけでもなし、いび きかいてガーガー寝てるだけなんだから、一緒に早寝させなくたっていいじゃ んかよー。ふー。純ちゃんのダンナさんが望むパートナーの形ってどんなんだ ろうなぁ……。 　純ちゃんが風邪で会社を休んだ日、ダンナさんは会社から帰ってきて、自分 の分の食事だけつくろうとした。 「私も食べたい」って純ちゃんが言うまえに、「具合どう？　何か食べた？」 　と一言なぜ言わんーっ（笑）。自分だけうどん食べようとするなーっ。 　そのとき、純ちゃんが思わず泣いたこと、あなたは知らんだろう（私は聞い てるから知ってるけど）。 　誰かへの気持ちが崩れるときって、実はアホくさいほど些細なことがきっか けになるような気がする。雪なだれみたいなもんで、ほんのちょっとの何かで ドドーッといっちゃう、かもしれない。うどんだってバカにはできんよ。
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