11月8日(月)
  深夜のおせっかい
 

   コタツを出す。
 いやもうコタツってサイコーな。ワシは温風がぶおーっと吹きかかってくる
のがたまらなく不快な人なので、冬は断然コタツ派だ。
 今もコタツに入って日記を書いている。気分がゆったり、とても優しい気持
ちになる(笑)。コタツに入ったまま、家中、ヤドカリのように移動できたら
どんなに幸せかなー。奈々ちゃんは今、コタツから首だけ出して寝てしまって
いる。生首みたいで恐い。奈々ちゃんはいったん寝入ってしまうと簡単には起
きないので、後でベッドに運んでやらねばならない。

 ついさきほど、純ちゃんのケータイに電話をかける。
 純ちゃんはホットカーペットの上で朝までうたた寝してしまう人なので、電
話で起こしてやらねばならない。
「ちゃんとベッドで寝なくちゃダメだよ! 腰にも悪いよ(最近、彼女は腰痛
なのだ)!」
「わかった〜。はぅ(あくび)」
 案の定、うたた寝していたようだ。

 あともう一人、ガールフレンドに電話。
 彼女も独り暮らしで、コタツうたた寝派なので、電話でたたき起こす。
「またコタツで寝てたでしょー?」
「はぅん(うんと言っている)」
「ダメだよベッドで寝なくちゃ!」
「はぅん」
「どうせこの電話切ったら、またそのままそこで寝ちゃうんだから、ほら、今
ケータイ持ったままベッドまで移動して!」
「はぅん」
「ベッドに入った?」
「はぅん」
 よっしゃ。

 まったく手がかかるな、ワシのハニーたちは。ていうか、おせっかいだなワ
シは。いや、ふだんまったくおせっかいやきなほうではないのだ。
 けど、なぜかこの”冬のうたた寝→風邪ひきコース”に関しては異常にうる
さい。なんでだろ(笑)。これくらいしか、ワシには世話をやいてやれること
がないからかなあ。

 コーヒーのテレビコマーシャルで、「同伴画家の山本容子さんは……」と聞
こえてギョッとした。すぐ「銅版画家の山本容子さん」と気がついたが、キャ
バ嬢グセが抜けてない自分に少し赤面。

 貴ちゃんからメールが届く。
「直が教えてくれたピラカンサのおしりの星をいま見てるよ。ホントかわいい
ね、この星」
 ピラカンサの実の下の部分には、黒くて小さい星みたいな形の窪みがある。
 面会に行ったとき、庭のピラカンサをちょこっと失敬して院内に持ち込み、
貴ちゃんに見せてあげた。
 彼女は「へえ。知らなかった」と言い、ものめずらしそうに何度も星型の窪
みを見ていた。メールのタイムスタンプを見ると、消灯を過ぎている。
 私は枝をそのまま自分のポッケに入れて帰ってしまったので、貴ちゃん、看
護婦さんに頼んで折ってきてもらったんだろうな(看護婦さんと一緒なら庭に
は出られるのかな?)。
 月明かりで、今あの小さな星を見てるんだろうか。想像すると、なんだか胸
がいっぱいになって仕方がない。またすぐ面会に行くよー。






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