３月１４日（火）
	天使的悪魔
	時々、へたれセックスがしたくなる。 　風俗に行かなければ、こいつがセックスできる機会は絶対にないだろうなと いう男が世の中にはいる。 　女とまともに喋ることができないヤツ、人前で妙におどおどしてるヤツ、デ ブジーンズにダサシャツが定番の服装のヤツ、学校ではクラスの女子に「あい つ、くっれえ〜」と絶対に言われてたであろうヤツ……。 　そういうしょぼい男に抱かれたくなる。 　足元にひざまずいてフェラしてやって、金玉も舐めてやって、尻の穴も舐め てやって、乳首も丁寧に舌で転がしてやる。「ねえ、おまんこにチンチン入れ て」と、おねだりなども言って、男をいい気分にさせてやる。そいつの人生で はありえないはずの快楽に溺れさせてやりたくなる。有頂天にさせてやりたく なる。 　しょぼい分際のくせに、いい気分になってチンポを膨らまし、有頂天になっ ている男の姿を見るのが私は好きだ。 　テク無しで単純で稚拙なだけのピストン運動。もちろん私の体はちっとも感 じない。でも、こんなしょぼい男と私は今セックスしてるんだと思うと、あま りのおぞましさに私の心はゾクゾクと興奮する。こいつ、いい気になってやが ると思うと、おかしくておかしくて笑いたくなる。 　高校を中退してからの私は様々な職場を点々とした。 　警備員、居酒屋（ちなみに、つぼ八）の店員、ゲームセンターの店員、旅館 の仲居、コンビニの店員……次から次に仕事を変えた。三十種類くらいの職を 経験していると思う。へたれ男はどの職場にもいた。 　へたれ男が、へたれの分際を忘れて、いい気になり増長していく過程を見る のが私には愉快でならない。金払わなきゃセックスさせてくれる女なんかいな いしょぼい男が、私とセックスしだして一週間目にはもうエラソーに「しゃぶ れよ」なーんて仁王立ちでチンポ突き出すのだ。 　おまえの分際で「しゃぶれよ」だ？　アッハッハッハ。大笑いったらありゃ しねえんだよ。つくづくひでえ人間だなあワシって。自分で書いてて、やなヤ ツって思うわ。 　しょぼい男に抱かれてるとき、私は身体中の血が入れ代わるような澄みきっ た気分になる。おぞましさの限度を越えたときの、あの逆に何かが浄化される 感覚は、私にとって時々必要なものなのだ。 　今はちょうどいいへたれ男がまわりにいないんだよなあ。どこかから調達し なくちゃな。抱かれながらおぞましさに鳥肌がぼこぼこ立つような寒いセック スが無性にしたい。
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