１月２８日（金）
	野球ボール型おにぎり
	穏やかないい天気。布団から出やすくて嬉しい。 　寒いと、電気毛布のぬくぬくから出られないんだよなあ。 　電気毛布無しでは、ワシは冬は寝られん。電気毛布にくるまって、カップヌ ードルの中のエビみたいに体を丸めて寝るのがワシ流。 　純ちゃんが風邪でダウン。 　新居に移った早々、寝込んでしまった。離婚のバタバタが終わって、一気に ドッと疲れが出たのだろう。 　まだ開けてないダンボールがそこらじゅうにある部屋で一人で唸ってる純ち ゃんをほっとけるわけがない。 　駅を出て、途中のスーパーに寄って果物を買う。 　スーパーの袋をぶら下げて、純ちゃんがこれから住むことになる街を見なが ら歩く。新築のアパートが見えてきた。 　この場所で二部屋あってこの値段ならすげえ掘り出し物だ。いいとこ見つけ たな。駅から歩いて十二分。 　チャイムを押すと、パジャマ姿の純ちゃんがドアを開けてくれた。 　うぉー、髪がボサボサで、やつれた感じがかわええ。 　病気のときの髪ボサボサに、ワシは弱いんだよなあ。すごく興奮する。これ ってやっぱり変態な趣味なんだろうか。 　いきなり襲いたくなってしまい、布団に押し倒す。三日間風呂に入っていな い純ちゃんの体を舌できれいに舐めてあげたくなる。 「やだ、ダメダメ。汚いってば。お風呂入ってないんだから」 　純ちゃんはワシをはねのけようとする。 　その風呂に入ってない体が欲しいんだからさあ。ヒヒヒ。 　風邪が悪化しないように純ちゃんにちゃんと布団をかけて、ワシは足元の方 からもぐり込む。 　マンコのびらびらを舌で丁寧にかきわけて舐めた。ふだんのマンコの五倍ぐ らい匂いが強い。こんな味はめったに味わえないので貴重だ。 　白くて湿ったカスもワシにとっては御馳走である。こんなときでもないと食 べられないからな。 「美味しいよ、純ちゃんのマンカス」 「いやあ！」 　熱っぽい声で純ちゃんが叫ぶ。うー、たまらん。色っぽい。 　ああ、もう本当にかーわええなぁ。 　純ちゃんは両足を閉じようとするが、いかんせん風邪で力が入らず（笑）、 ワシの思うがままなのであった。 　何か食べるものを作ろうと思った。作りたくなった。こんなことを私が思う なんて恐ろしく珍しいのだけど。誰かに何か作ってあげようと思ったのって、 もしかするとはじめてかもしれない。 　基本的に私は外食派なので料理というものを一切しない。でもまあ、やろう と思えば、ご飯くらいは炊ける。 「おにぎりでも握る？」 　純ちゃんに訊く。 「うん。食べたい、おにぎり」 　握りだすまで、ワシは重要なことに気がつかなかった。微塵も気がつかなか った。ん？　ん？　に、握れねえ！　なんじゃこりゃ！　おにぎり握れねえ！ 　これまで、おにぎりなんか握ったことなかったけれど、握れないかもしれな い、という発想がまるで私にはなかった。あんな簡単なもの、ちょいちょいと 握れちゃうもんじゃねえの？ 　な、なんじゃこりゃーっ。おにぎりってこんな難しいのか！　知らなかった ーっ。どうやっても三角にならん。仕方がない……。 　ワシは野球のボールのようなおにぎりを握った。あらためて思う。なんじゃ こりゃ。けど、これしか無理。すまん。 　純ちゃんはいつのまにか寝ていた。 　皿にまん丸のおにぎりを二個置いて、私はそっと帰る。これから仕事だ。 「いちおう　おにぎり」とメモを書く。 　純ちゃんからもらったばかりの合鍵を、ポケットの中でカチャカチャいじり ながら駅までまた歩く。
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