2月10日(木)
  真夜中のレズビアンショー
 

   ペニバンマニアのM男が来る。
 ペニスバンドを付けるのって意外と好きだ。
 お手軽なシーメール気分を味わえる。おもちゃとはいえ、チンコが生えてる
ってかなり妙な気分。なんかこう「ヘンシーン」みたいな楽しい気分(笑)。

 ペニスバンドはM男が希望すれば装着する。これ、希望する人は毎回、希望
するんだよな。
 ワシのニセチンコにM男がフェラする。ペニバンなんてSMクラブで働かな
かったら絶対に付ける機会はなかっただろうなあ。

 あれを付けると、男が女にフェラさせたい気分がよーくわかる。
 仁王立ちのワシのイチモツを、ひざまずいたM男が一所懸命しゃぶって、ワ
シは上からそれを見下ろす。はっきりいって、きっぶんいい〜〜。
 王様気分だな、ありゃ。ほら舐めろや、ほれほれ、口すぼまして舐めんかい
って気分になった。
 イチモツに手を添えさせないで口だけでフェラさせると征服感が倍増。
 M男の頭を無造作につかんで、ワシはガンガン腰をふる。M男の咽がオエッ
となるほどニセチンコで突く。
 ワシはかわいい女の子を苛めるのは興奮するけど、M男を苛めてもちっとも
興奮しない。あー、おもしれえなあって感じで(笑)、完全に「お仕事」だ。

 今日のM男は自分のチンコを罵倒してもらうのがとにかく快感、という趣味
の持ち主だった。
「なんなの? おまえのこのみすぼらしくてしなびて汚いチンコは? よくこ
んなみっともないチンコぶら下げてられるわねえ?」
 そうすると、M男のヤツ、ササーッと両手でチンコを隠しやがんの。
 なんか、かーいいわなあ。
「おまえのと私のとどっちが立派かしら?」
「直女王様のモノの方がご立派でございます」
「そうよねえ? おまえのみすぼらしいチンコなんか付いてるだけ無駄よ。自
分で言ってみなさいよ。僕のチンコは付いてるだけ無駄ですって」
 M男はチンコを隠したまま「僕のチンコは付いてるだけ無駄です」と言う。
「ほんと無駄よね。そんなチンコ、捨てちゃいなさいよ。ほら、そこのゴミ箱
に捨てちゃいなさい」
 ひっでえなぁ。でも、M男の希望なんだからいいのだ。

 M男はトボトボとそこまで歩いていくと、ゴミ箱の蓋を開けて自分のチンポ
をそこに突っ込んだ。
 ゴミ箱にチンポ突っ込んで勃起するなんてM男の道はつくづく深いと思う。
いや、心底そう思う。
 M男はゴミ箱の中で射精した。その姿を見てたら、ちょっと胸がキュッとし
た。M男の頭をヨシヨシしてやりたくなった。世の中、いろんな人がいる。
「僕、ゴミ箱の中でしか射精できないんです」
 プレイ前に、M男にそう言われていたのである。


 仕事帰りに空。
 ピーター・アーツから「空に来い」とメールが入っていたのだ。
 一時間ほど飲んだ。ピーター・アーツが席を立ったので私も店を出る。
 ヤツの車に乗る。だが、車がホテルに行きそうな気配がない。車はどんどん
走っていく。まあ、どこへ行こうとかまわないけれど。
 車が止まった場所に私はとても驚いた。林檎がいる公衆トイレのそばで、ピ
ばーター・アーツは車をとめた。
 なんでヤツが林檎のことを知ってるんだろうかと考えて、ああと思った。
 マスターがたぶん話したのだ。このあいだ、マスターに私は林檎のことをち
ょっと話した。

 ヤツは平気で女子トイレに入っていく。ま、待て、コノヤロー。私は慌てて
後を追った。林檎の様子を見に行くときは、林檎が寝てる最中に行ってはまず
いので私はいつもiモードでわざわざメールしてから行っていた。林檎から返
事がきたときだけ私はドアを叩く。それくらい慎重になっているのに。
 遅かった。ピーター・アーツは既にドアをノックしていた。林檎がドアを開
ける。よかった。だいじょうぶだ。起きてた顔だ。
 だが、見知らぬ男の出現に、林檎の顔がさっと緊張する。
「家をやる」
 いきなりピーター・アーツは言った。
 林檎がきょとんとヤツを見る。
「一軒家だ。住むのはおまえ一人だ。今日から自由に使っていい。俺は一歩も
家には近寄らない。案内するから一緒に来い」
 それだけ言うと、ピーター・アーツはさっさと車まで戻ってしまった。

「直ちゃん、どういうこと?」
「ごめん。私もよくわかんないんだ。あの人は私のヤリ友」
 そんなことを言い合っているあいだにも、プップーとけたたましいクラクシ
ョンが鳴る。真夜中なのに、そんなことヤツにとっては一切関係ないらしい。
 とりあえず、林檎と私はヤツの車に乗った。
 住宅街をやや外れたあたりで車は止まった。
 少し古い一軒家があった。
 ピーター・アーツが鍵を開けて中に入る。私たちも続けて入る。
 ピーター・アーツが林檎に鍵を渡す。
「この家、わたしにくれるの?」
 ピーター・アーツが頷くと、一瞬おいて、林檎は泣いた。肩は少しも上下せ
ず、すーっと静かに涙が頬をつたう。

 財力とはこういうものかと私は思い知らされた。
 一軒家を買う財力は私にはない。林檎の様子を見に行くのが関の山だ。
 そして財力の他にも、私には強引に林檎を助けようとする意思もなかった。
 心配なのはものすごく心配だけど、公衆トイレで寝るということはきっと何
か林檎にだけわかる意味があるのだろうと思い、強引に救出を試みなかった私
は薄情なんだろうか。最悪の場合、林檎が死ぬことだって考えられるのに。
 私には強引に事を運ぶということが今も昔もできない。
 うまく言えないが、ピーター・アーツの勝ちだと思った。


「別にタダでくれてやるわけじゃねえぞ。これからは俺が呼び出したらすぐに
出てきてセックスさせるんだ。それが条件だ」
 林檎がなんと答えるのか。私は林檎の顔を見る。
「うん、いいよ。家、ありがとう」
 林檎の答えに私は衝撃を受けた。ありがとう、と林檎は言ったのだ。
「じゃ、まず、今ここで、この女と一緒にレズショーして見せろ。女と女がヤ
ルのが見たい」
 ピーター・アーツは口の端で笑う。

 私たちは服を脱ぎ、暖房のスイッチもまだ入ってない部屋で、ガチガチ震え
ながらセックスをして見せた。
 強烈な寒さで、裸になったばかりの林檎と私の乳首は立っている。レズショ
ーらしい喘ぎ声を出そうと思っても、寒くてどうにも声が出ない。
 ヤツはどうして林檎を助けようと思ったのだろう。単なる気まぐれ?
まったくわからない。ヤツの考えることはまったく見当がつかない。

 ピーター・アーツの目の前で、私たちは一生懸命レズビアンショーをした。
 まんことまんこをこすりあわせて見せたり、シックスナインの体勢で舐めあ
ったりした。動きまわっているうちに、最初は鳥肌でボツボツしていた林檎の
肌が滑らかな平らになっていくのがわかった。
 私は少しもイヤな気持ちではなかった。今日のところは単純にヤツの財力に
感謝する。林檎の表情もとても穏やかだ。やっと一人で安心して眠れる部屋を
手に入れた安堵感でいっぱいなんだろう。









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