１２月２９日（水）
	あなたの中に入りたい
	別にペニスを欲しいとは全然思わない。 　ただ、指よりもペニスのほうがその人に深く入り込める。 　好きな人の中に入りたい、時々、私は強くそう願う。 　桐野夏生の「ＯＵＴ」という小説に佐竹という男が出てくる。佐竹は快楽殺 人と言われても仕方がない方法で女を殺した。愛しい女の中に入りたい、ペニ スだけでは満足できずに佐竹は女をナイフでめった刺しにし、その傷口に手を 入れ内蔵まで掻き回して殺した。 　その描写を読んだとき、私は心臓が異様にバクバクした。 　私はフィストファックが好きだ。 　でも当然、私の彼女たちは恐がって、私の拳を膣には入れさせてくれない。 　というか、チャレンジさせてはくれん。いくら鬼畜なセックスを強要してば かりのワシとはいえ、これは強要しきれない。 　今まで、ワシの拳を入れたのは千佳ちゃんだけだ。私の手は小さいほうなの で（女性一般の平均と比べても小さい）、男の拳に比べたらラクに入る。 　男の拳だったら入らなかったかもしれないが、ワシの拳は千佳ちゃんの膣に ずっぽりと入った。 　気持ちいい。あったかい。という感覚を越えた何かを千佳ちゃんの膣の中で 私は感じた。千佳ちゃんの中に私は入ってる、と思った。 　指を一本や二本入れてるときとは全然違う感覚だ。 　男はペニスを女の膣に挿入しているとき、そんなふうに感じるのだろうか。 　だったら、それは素直にうらやましい。 　ペニスそのものではなく、その人の中に、奥に、入り込める器官を何の苦労 もなく持っていることがうらやましい。 　それを考えると、やはり男と女の体の仕組みはよくできている。 　棒と穴。神様はよくつくったもんだ。男は入りたいと願い、女は入ってきて ほしいと願う。うまくできている。 　棒と棒でもいいじゃんな。男と男もオッケーだ。一方の棒を一方の穴に入れ ればいいんだから。 　でも、女と女の組み合わせは、入れたいと願う者がいても棒が無い。繰り返 すけどペニスが欲しいわけじゃない（笑）。私は男になりたいわけじゃないか ら。棒のようなもの、相手の中に、奥に入り込めるものが欲しいのだ。 　それは拳しかないではないか。 　純ちゃんは私の拳を入れさせてくれるだろうか。佳子ちゃんは入れさせてく れるだろうか。変態と罵らないだろうか。 　罵られてもいいから、入れさせてほしい。私は入りたい。 　ピーター・アーツにメールで呼び出される。 　待ち合わせ場所で私は待っていた。 　ピーター・アーツの姿が見える。なんでまっすぐ歩かないんだろう。右に左 にふらふらした足取りだ。 　ずっと観察していてわかった。ヤツは枯れ葉のあるところを選んで歩いてい るのだ。カサカサカサカサ、枯れ葉を潰して歩いているらしい。 　アッハッハッ。ヒマな歩き方だなあ。私を三十分も待たせておいてさ。 　私は無言でヤツの車に乗り込む。ヤツも無言で発車する。 　行く場所はホテル。そこしかない。 　髪をつかまれながらガンガンぶち込まれる。膣にバイブを入れて固定され、 アナルにはピーター・アーツが入ってくる。 　強烈にイクときって、たぶん一瞬、人は死ぬんじゃないかと思う。 　意識がこの世のものではないわ。 　池袋通り魔事件で姉を殺された弟がホームページを開設している。 　ホームページの名前を見た瞬間、胸を鷲掴みにされた気がした。 　ホームページタイトル、「姉のページ」。 　これだけで、もうすべてが表されてるよなあ。すげえタイトルだ。 「犯人が反省することすらも許さない。姉はもう何も思うことができないのだ から」と彼は言う。そうだよな。
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