12月15日(水)
  シリアルババ
 

   横浜には顔面白塗りのメリーさん(日本人だよ)がいる。
 昔はパンパンだったとかいう噂。今は老齢になりながらも、ドレスのような服
を着て、深夜の街頭に特に何をするでもなく佇んでいるという。
 横浜に行ったら、ぜひメリーさんを目撃したいものだ。

 どこの町か忘れたが、タイガーマスクの虎マスクを被って新聞配達している
おじさんがいるという。
 そんなおじさんがいるなんて、ワシの胸はドキドキだ。
 もしもワシがその町に住んでいたら、絶対におじさんが配る新聞を講読する
ね。ビール券無しで一年講読しちゃうね。
 どの新聞、配ってんだろうなあ。なんとなく、読売って気がする(笑)。


 そして、ワシの住む町。
 メリーさんや、タイガーマスクのおじさんみたいな超大物は残念ながらいな
い。けど、なかなかの有望な奇人が一人いる。
 朝、ゴミ出し場所に行くと必ず、ゴミババアが口をへの字に曲げて、しかめ
面で立っている。六十才ぐらいのバアサンだ。
 住民がゴミを置くと、中を開けはしないが、外から見て、燃えないゴミ、シ
ャンプータンクなどが入っていないかを厳しくチェックする。もちろん行政に
よるチェックじゃなくて、ババアの個人的な勝手なチェック(笑)。
 ゴミの分別問題に彼女は異常なまでの執念を燃やしているらしい。
 収集車が来るまで、ずーっとそこでゴミを見張っているのだ。
 私と奈々ちゃんは、ババアのことを「シリアルババ」と呼んでいる。あの名
作映画、「シリアルママ」からの命名だ。

 若い女とシリアルババが舌戦を繰り広げている現場に出くわしたことがある。
 燃えないゴミが、半透明の袋の外側からでもはっきり見えたらしくて、シリア
ルババに彼女は注意された。
「うるせーよ。クソババア!」
 彼女は毒づいた。
 あんたみたいな人間がいるからダイオキシンがどうたらこうたらとか、地球
は今も泣いてるんじゃとか、ババも負けずに応戦していた。
 朝の光の中、ワシは頼もしい思いでババを見つめた。
 変わり者のいない町なんてつまんねえよな。
 町には一人や二人、奇人がいたほうがいい。
 シリアルババの注意をきかず、女はそのまま行ってしまおうとした。
 ババは女が置いていった袋をガサガサッと開け、何かプラスチックのようなも
のを取り出すと、女を追いかけて走り出した。
「これは出させないよっ!」
 と、ダミ声で怒鳴りながらババは走る。カーッコええ。
 分別くらいちゃんとしろよな、アホ女。いつかババに殺されるぞ(笑)。


 図書館で「綾。ホステス、22歳。」を見つけて読んでくれたという報告がゲス
トブックにあって嬉しいなあ。そうかー、図書館に入れてもらうっていうのはい
い感じだ、うん。今日は海外で本を買ってくれた人からもメールが来た。
 おー、海を渡ったんだー。カンゲキ。
 本を読んでもらうことが、ワシは一番嬉しい。まだ未読の方はトップページの
プロフィールのところで、「あとがき」が読めるようになっているんで、クリッ
クしてみてねー。発売して三ヵ月。増刷への道は厳しいのであった(笑)。






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