１２月１４日（火）
	夜のピラカンサ
	ボーナスの影響で店が込みまくっている。ホントわかりやすいなあ。 　ビギナーＭ男はとにかく、まごまご、きょときょと、落ち着きがない。しか も、やることなすことトンチンカン。 　プレイ中、ウソー！　みたいなことが多くて笑いをこらえるのに苦労する。 　今日なんて、舌奉仕させてやったら、舌がつっちゃったＭ男がいて、ＳＭの 雰囲気ぶち壊しだった。 　足フェチのＭ男の相手は楽だから（ただ舐めさせてればいいんだから）、ワ シ的には歓迎なのだが、Ｍ男のヤツ、一生懸命やりすぎたみたいだ。 「だ、だいじょぶ？」 　一瞬、ワシは素になって訊いてしまった。 　Ｍ男は、「あぐあぐ」言うだけで返事ができなかった（笑）。 　しかし、舌がつるほど頑張るなんてバカだなあ。かわいいわなあ。ちょっと 微笑ましいわなあ。 　この季節、花屋の前を通ると、ポインセチアの赤と緑が目に飛び込む。 　派手な葉っぱだ。クリスマスが近い。 　山田さんちのサザンカの花が終わりになってきた。 「花が好きなのねえ。花が好きな人はご家族に花好きな人がいるのよねえ」 　と、今までに何度か同じことを、山田さんちのおばあちゃんに言われた。 　また言われた。確信した。おばあちゃんはボケているのだ。 　おばあちゃんが言うことは当たっている。 　このごろ、奈々ちゃんも花の名前を一つ一つ覚えていくのが楽しいらしい。 「赤いのが花かと思ったらこれも葉っぱかー。紛らわしいよ、おめえ」 　ワシが買ってきたポインセチアを、おめえ呼ばわりしつつも（笑）、 「名前、何？」と、さっそく訊いてきた。 　貴ちゃんからメール。 「ピラカンサって赤いブドウみたいだね」 　アハハ。そうそう。 　実がたわわで、超小粒のブドウみたいに見えるんだよね。 「夜、電気の消えた部屋でピラカンサを見ると、なんだか灯みたいな気がする よ」 　ピラカンサの灯かあ。いいねえ、それ。 　借金取りに追われているという妄想に貴ちゃんは苦しんだ。 　カードで借りまくったのかと思いきや、貴ちゃんの母親の話によると、カー ド関係はどうもきれいだったらしい。 　そのかわり、友人という友人、知り合いという知り合いに借金を申し込みま くった。貴ちゃんの交遊関係の多くは破綻してしまったようだ。 　貴ちゃんが追われていたのは借金じゃない。 　何か別のものから追われていて、それがわかりやすく借金という形の妄想に なって表れたのではないだろうか。 　私にはわからないことが多すぎる。心理学の本をむさぼり読んで勉強しよう かと一時は思った。けど、やめた。 　私は貴ちゃんの話を聞いてあげるだけで、たぶんそれだけでいいのだ。
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