８月２５日
	ＭＯＴＨＥＲ
	母乳が出る気配がないーーっ。 　心持ち、乳首が大きくなったような気がしなくもないのだが、まだ待望の一 滴が出ない。恵みの一滴が降らない。日照りつづきのワシの乳。 　サトシ、もっと、ちゅーちゅー吸ってくれよー。私の脳下垂体を刺激してく よれー。くそー。まだあきらめんぞ。 　空に寄って、マスターからカブトムシを受け取ってくる。 　雅代ちゃんちに届ける。マスターからユウヤへのお土産。メス、三匹、オス 七匹の計十匹。豪華な土産なり。 　縁日では、虫かごに一匹のカブトムシが入ってて千円だもんなあ。高いよな あ。虫を買うという感覚が私の中にはない。 　田舎じゃ、そんなものは家の敷地の木にたかっているし、近くの雑木林に行 って、がつんがつん、それっぽい木にキックをかませば、ぼとんぼとん落っこ ちてきた。クワガタもカブトムシも自分でいくらでも調達できた。 　けど、今思えば、私はそうとうにデタラメな飼い方をしていた。 　一つのたらいで何十匹も飼っていた。クワガタもカブトもみんな一緒。 　朝、起きて、たらいを覗くと、よくクワガタの胴体がちょん切れたりしてい た。狭いスペースに押し込まれたムシたちは、ストレスで毎日殺し合いをして いたらしい。わー、ひでえ。ムシさん、ごめんなさい。 　子どもなんて、そういうもんなので。 　雅代ちゃんちに行くと、表で、ユウヤがしゃぼん玉をしていた。 　が、しゃぼん玉を飛ばさずに、地面に向かって吹いている。 「ユウ、何してん。上にぷーってしなきゃ」 　私は言った。 「アリをね、殺してんの」 　はー。なるほど（笑）。愛らしく、しゃぼん玉してたわけじゃないのな。 「誰に教わったん、そんなこと」 「タカシくん」 　ああ、保育園の友達か。子ども時代って、ムシに残酷なことをするもんなん だよな。バラバラクワガタを見て、私も実はドキドキしてたしな。 　アリの巣に、自転車の空気入れの先っちょを突っ込んで、巣を空気爆破した りなんてしょっちゅうだったし、ハエをちり紙にくるんで、マッチで火をつけ て火あぶりなんてのもやった。 　よくそんなかわいそうなことを平気で、しかも楽しんでやってたよなあと思 う。子どもって、そう、残酷なのだ（笑）。 　プレイを延長する客はいるけれど、短縮する客というのは珍しい。 　そのＭ男は、プレイがはじまる前、私に「女王様」と言おうとして、なぜか 「お母さん」と口走った。 　Ｍ男の慌てようといったらなかった。 「すすすすすすすすすすすすすすすすすすすすす、すみませーーーーーっん」 　いや、大げさに誇張してるわけじゃない。本当にこんな感じだった。 　そういえば、昔、学校で「先生」と言うつもりで、「お母さん」と言ってし まった子がいたっけな。 　これって、そんなに珍しくはないことだと思う。一人じゃなくて、私が覚え てるだけで三人いるもんな。小学校で二人、中学で一人、先生のことを「お母 さん」と呼ぶ失敗を犯した人がいた。 　他にも、バイトしている人で、先生のことを思わず「店長」と言ってしまっ た人とかもいるんではなかろうか。 　Ｍ男はとても動揺してしまい、 「あ、あの、き、今日はすみません、か、帰らせてください。こここ、このま まプレイをできそうもないので。料金はもちろん、ちゃんとお支払いしますの で。で、でででは、し、失礼いたします」 　ものすごい勢いで支度して帰ってしまった。そのＭ男はいつも幼児プレイを していく人だ。プレイでは、私のことを「ママ」と呼んだりする。 どうやら、プレイが始まる前に、素の状態で、いわばシラフの状態で「お母 さん」と呼んでしまったことに、自分でびっくりし、ショックを受けてしまっ たらしい。 　単なる言い間違えなのか、私が彼の中で「お母さん」になりつつあるのかは わからない。そんなことはどうでもいい。 　ただ、私が奴にプレゼントしてあげようと自費で買った「おしゃぶり」はど うしてくれるんだよ（笑）！ 　おまえ、今月、誕生日だろ？　せっかくプレゼント買ったのにさ。女王様が 自腹でさ。おまえが泣いて喜ぶブツをさ。大学の教授室で、授業の合間におし ゃぶりしゃぶったら、とっても愉快じゃないかと思ったのにさー。 　早く次の予約入れてこないと、プレゼント捨てちゃうかんな！ ダウンタウンの「ガキの使い」で、松本の発言がピーになった芸能人ヅラネ タは神田正樹ってほんとか？ 確かに、あの髪の毛は思い切り怪しいよなあ。一度、芸能界のヅラハンター こと水道橋博士に、ヅラ芸能人について、現時点でわかっている範囲で表にま とめてほしいもんだなあ。 　ホームページにphoto追加。 　ああ、ワシのハニーのおっぱいはホント自慢できるなあ。ええ乳や。
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