８月７日
	ねこまんま
	仕事休み。土曜だけど休み。 　三日働いて二日休むくらいが、私にとってベスト。 　あんまり働きたくなーい。 　あいかわらずカーッと暑い。 　なんだか無性に、ねこまんまが食べたくなる。 「奈々ちゃん、ねこまんま食べたくない？」と言ってみる。 「何だよ急に。今、いいとこなのに！」 　と怒られる。 　奈々ちゃんは、昨日の「火垂るの墓」の録画を見ながら泣いていたところだ った。大福のようなでっかい涙をぼたぼた垂らして、とてもかわいい。 「ぶっとばす！　戦争！」 　見おわって、奈々ちゃんは宣言した。かわいい（笑）。 「どうやってぶっとばすの？」と訊くと、 「わかんねえけど、とにかくぶっとばす！　節子と兄ちゃんに意地悪した親戚 も、さつまいもをくれなかった農家のジジイもぶっとばす！」 　ティッシュをばさばさ三枚も四枚も取って、鼻をかんでいる。 　私は「火垂るの墓」は、あまり好きではない。映画の成分を分析すると、百 パーセントが涙だからである。 　こんど、奈々ちゃんにはマンガの「はだしのゲン」を見せてやろう。いや別 に反戦うんぬんというわけではなく、単に奈々ちゃんにショッキングなものを 見せたいという悪趣味な企みだ。ヒヒヒ。 　中学生のとき、何気なく本屋で「ゲン」を立ち読みした。 　あのときのショックといったらない。 　原爆で、人の顔がムンクの「叫び」みたいにどろどろに溶けていたり、溶け てぶら下がった皮膚をずるずると幽鬼のように引きずって行進する人々の群れ が出てきたり、両手足が無い元軍人の体からウジがぐっちょりわいていて、家 族も気味悪がって面倒をみてくれない男のウジを、ゲンがアルバイトで取って やったり、その軍人が弱音を吐くと、ゲンが、「こらーっ、おっさん！　なに 弱音吐いとんじゃー。こら、われー」と怒鳴って励ましたり……。 絵のタッチ、描写がむちゃむちゃ強烈なのだ。はっきりいって、あの絵は私 のトラウマになった。あんな怖い絵、見たことない。読んだ夜、うなされた。 　もう二度と読み返したくない。見たくない。でも、人には見せたい（笑）。 あのショックをぜひ味わってもらいたい。 　あと、芝居の「ウインズ　オブ　ゴッド」の録画ビデオも見せてやろう。 　訳して神風。主演は今井なんとか。自衛隊をやめたあと、俳優になった人。 名前、ド忘れ。コメディアンの二人組が、ある日、突然タイムスリップして、 特攻隊のいる戦争の時代へといってしまう。これはとても好きな芝居だ。 　夜、奈々ちゃんが「味噌汁つくってやるよ」、とスーパーで味噌を買って来 た。「味噌汁なんかつくれんの？」と訊くと、「バカにすんなよ」と自信満々 だ。インスタントのダシの素も買ってきて、ちょっと入れすぎではないかと不 安なくらい、ダシをぶちこんでいる。 　具は、豆腐と油揚げ。米も二キロの袋を買ってきた。 炊飯ジャー、まだ使えるかな？ と心配だったがだいじょうぶだった。ふだ んはぜんぶ外食なので、ジャーも埃をかぶっていた。 定食屋で、ご飯をねこまんまにしてしまうのは、いくらなんでも失礼な話だ からなあ。やっぱり家だよなあ。 　奈々ちゃん特性のねこまんまができた。 　二人で、ネコの気分で食べた。 「仕方なく、ねこまんまですませて食べるんじゃなくてさ、ねこまんまをわざ わざつくるのって、なんかすげえやな感じっぽくねえ？　でも、久しぶりに食 うとうめえ〜」 　奈々ちゃんは言った。 　ダシがやっぱり多すぎて少し変な味がしたけど、でも、おいしかった。 本日のあんぽんたんメール 名前無記入しかもタイトルも無し＠ドコモ 「メール交換しませんか？ 宜しくお願いいたしまーす！ ２６歳会社員 でーす」 なんだ、こいつ。死ね。いいから今すぐ死ね。 なんでこんなに頭わるいんだ？ 何が「でーす」だ、コノヤロー。 ナンパを通り越して、こんなメールもらったらさぞいやだろうなっていう、 いやがらせメールなのか？ なんなんだ？ ナンパなのか、いやがらせなのか はっきりしろ。
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