8月5日
  放置天国
 

   こんなんでお金をもらっていいのかと思ってしまう。
 二時間コースだが、私はほとんど何もしない。鞭もバイブも出番がない。
 最初にM男をロープで縛って、そのまま時間いっぱい放置する。それだけ。
 このお客さんは常連で、いつもこれしか希望しない。ラクといえばこんなラ
クな話はないが、あまりにもラクすぎる。
「おまえなんか、かまってあげないよ。ここで一人で、ねっ転がってな。だー
れも助けになんか来てくれないんだからね。一人ぼっちで、ずーっとここにい
な。私も二時間たっても来ないかもね。忘れちゃうかもしれないなぁ。アッハ
ッハッハ。来なかったらごめんね。じゃあねー」
 と部屋を出る。
 その前に、冷房なんて奴隷の分際で贅沢だよね、とクーラーのスイッチは切
ってしまう。わー、すげえイジワルー。
 でも、汗だくだくで、みっともないカッコになっちゃうのが、このM男は好
きなのだ。こういうイジワルが私の仕事なのである。

 本当は猿ぐつわもしてほしいと言われているのだが、それはしない。
M男を一人で放置して、その場所から離れるのは危険なことなのだ。
M男の相手をしないで、部屋の中で放置プレイをするならいいのだが、部屋
を出てしまったら、万が一、不測の事態になったとき、取り返しがつかないか
らだ。縛るだけならいいが、猿ぐつわなんぞして、私のいない隙に、M男がも
しも窒息して死んでしまったりしたら困る。
 それって業務上過失致死ってことになるのかな? 殺人にはならないよな?
どうなんだ? 女王様がお縄になっちゃシャレにならん。

 ボンレスハムのように無様にぐるぐる巻きのM男のロープを解いた。
 M男は汗だらだらであった。もともと太ってる人なので汗をかきやすい体質
なのだ。それにしても水から上がったみたいにびっしょびしょだ。髪もぼっさ
ぼさだし。かっちょわるいことこの上ない。
「よくがんばったわねえ。おまえは、本当にかわいい私の奴隷よ。いい子ね」
 私は頭を撫でてやった。
 M男は「わーん」と声をあげて泣く。子どもみたいに大声でしゃくりあげて
泣く。私にしがみついてくる。
「こらっ! おまえの汚い汗が付くでしょっ!」
 すかさず叱る。
「す、すいませんっ」
 M男は土下座して謝った。

「フフフ」
女王様チックに私は笑う。
「私が忘れちゃったらどうしようかと思った? 怖かった?」
「は、はい。怖かったんですぅ」
「私がおまえを忘れるわけないでしょ?」
 M男は声を震わせて、でも、しっかりチンコは大きくなって泣いている。
 孤独、絶望、という状態が、こいつのエクスタシーなんだろうか。
 M男に自分でコンドームを付けさせた。私はハイヒールの裏をM男に向けて
突き出す。
「おまえは、靴の裏で十分よねぇ」
「はい。靴の裏で十分です」
 M男はチンコをヒールの裏に擦りつけてイッた。
 これで、これだけで私は五万円。ええ商売やなあ。

 二時間の間、M男は一人で何を考えているんだろう。
SMが心理セラピーっぽい役目をはたしているのではないかと思えることが
時々ある。

コンビニで、ガリガリくんを買って家に帰る。
奈々ちゃんは、今日もテレレのアルバイトにいそしんでいる。
時給三千円といっても、結局、計算は秒単位なので、引き延ばしがたいへん
らしい。ふつうのおしゃべりではなく、より時給のいいアダルトな会話コース
でやっているのだそうだ。
電話口に、ウィーンとうなるバイブをくっつけている奈々ちゃんの口に、
「はい」とガリガリくんを入れてやった。
奈々ちゃんのマンコに入ったことになっている乾いたバイブは、グィングィ
ンと高速回転している。


慶応医学部の輪姦魔たちがしばらくしたら復学するって本当か?
大学もアホだなあ。世間の非難ゴーゴーは明らかで、すぐにそんなの取り消
ししなくちゃならないだろうに。そんなこともわからないのか。
これからの慶応大学のキャッチコピーはこれだ! これしかない!
輪姦魔を医者にしてあげるステキな大学!


横浜で原付バイクの少女引ったくり団が、パトカー五台の追跡を振り切って
逃走。捕まえてみたら原付を運転していたのは、なんと小学六年生。アハハ。
イカしてんなー。こういう事件は好きだ。逃げろ逃げろ。どこまでも。





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